空き家をリノベーション!失敗しないためには

Pocket
LINEで送る

近年の空き家が急速に増え、中でも、適切な管理を行っていない空き家=放置してある空き家が増加し、安全・衛生面や景観の面から地域住民の生活に深刻な影響を与えており、その対策が早急に求められていました。
そこで、地方の空き家条例や、空き家等対策対策の推進に関する特別措置法が制定されました。

 一方,現在全国にある800万戸を超える空き家を、有効活用しようとする取り組みも広がっています。これだけの空き家があるのは、少子高齢化を原因とする人口減少によって、不動産の需要が下がっていることが原因ですが、このような状況でも個性的な物件を中心にリノベーション物件の人気は高まっています。空き家を人気物件にリノベーションして、有効活用してみませんか。

空き家等対策 対策の推進に関する特別措置法実施

先頃,平成27年5月26日に、一部施行されていた空き家対策特別措置法が全面施行されました。これにより、法律的に自治体に権限が付与され、本格的に空き家対策がスタートしました。その具体的な内容とポイントを見てみましょう。

空き家等対策 対策の推進に関する特別措置法実施とは

まず、この措置法の施行により、安全面や衛生面で問題のある空き家(=「特定空家」)を所有する者に対し、市町村の勧告・命令によって、撤去や修繕できることになりました。

具体的には、

①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

②著しく衛生上有害となるおそれのある状態

③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態

④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にある空家等をいいます。(2 条 2 項)

これら特定空家に対し、市町村は、措置の実施のための立入調査を実施し、指導や勧告、命令を行い是正を促します。更に所有者によって改善されない場合は、代執行の措置、つまり強制撤去までを行うことができます。

空き家等対策 対策の推進に関する特別措置法実施の目的

現在全国の空き家数は800万戸以上、住宅総数の約13.5%を占めています。空き家数、空き家率ともに過去最高値になりました。何と、7~8軒に1軒が空き家という計算になります。

この状況を放置しておくと、先ほど挙げた安全面や景観の面での問題にとどまらず、火災が発生したり犯罪の温床になる可能性もあることから、行政の側からは、所有権という強力な権利をある程度制限し、撤去ができる状態にする必要があったわけです。

空き家等対策 対策の推進に関する特別措置法実施のポイント

特定空き家に対する措置のポイントは次の通りです。

①市町村に立ち入り調査権を付与
特定空き家かどうかを判断するため、市町村に立ち入り調査を行う権限が与えらています。所有者がこれをを拒めば、20万円以下の過料が科せられます。

(参照条文・9条)

 

  1. 市町村長は、当該市町村の区域内にある空き家等の所在及び当該空き家等の所有者等を把握するための調査その他空き家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うことができる。
  2. 市町村長は、第14条第1項から第3項までの規定の施行に必要な限度において、当該職員又はその委任した者に、空き家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる。
  3. 市町村長は、前項の規定により当該職員又はその委任した者を空き家等と認められる場所に立ち入らせようとするときは、その五日前までに、当該空き家等の所有者等にその旨を通知しなければならない。ただし、当該所有者等に対し通知することが困難であるときは、この限りでない。
  4. 第2項の規定により空き家等と認められる場所に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
  5. 第3項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
    特定空き家と判断すべきかどうか調べるため、市町村に立ち入り調査の権限が与えられました。空き家の所有者が立ち入り調査を拒めば、20万円以下の過料が科せられます。

②撤去や修繕などの指導・勧告・命令
特定空家と判断された場合、市町村長は、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう、その所有者等に対し、①助言または指導、②勧告、③命令することができます。助言・指導→勧告→命令の3段階で是正措置を実施します。最後の命令に従わない場合、50万円以下の過料となり、また強制代執行が可能で、費用は所有者から徴収します。

(参照条文・14条)

 

  1. 市町村長は、特定空き家等の所有者等に対し、当該特定空き家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空き家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
  2. 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空き家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
  3. 市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
  4. 市町村長は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対し、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
  5. 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から5日以内に、市町村長に対し、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
  6. 市町村長は、前項の規定による意見の聴取の請求があった場合においては、第3項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
  7. 市町村長は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第3項の規定によって命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の3日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
  8. 第6項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
  9. 市町村長は、第3項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
  10. 第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第二項の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うことができないときを含む)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
  11. 市町村長は、第3項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
  12. 前項の標識は、第三項の規定による命令に係る特定空き家等に設置することができる。この場合においては、当該特定空き家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
  13. 第3項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く)の規定は適用しない。
  14. 国土交通大臣及び総務大臣は、特定空き家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。
  15. 前各項に定めるもののほか、特定空き家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。

 

③固定資産税の住宅用地特例から除外
まず、市町村によって、特定空き家と判断→撤去・修繕などの指導→勧告→命令の順に手続きが進められますが、勧告を受けた場合、固定資産税などの住宅用地特例から除外されます。

 この特例が空き家を増やしている更なる原因(少子・高齢化の他に)と考えられています。というのも、固定資産税の住宅用地特例というものがあり、家屋があれば土地の固定資産税を更地の場合よりも最大6分の1に優遇するという措置があるんです。つまり、何かしらの建物がある方が、更地にするよりも税制上有利ということになります。

結果、所有者としては、更地にするよりも、何でもいいから建物を放置し、特例によって、固定資産税を抑えようとします。ところが、特定空き家の勧告を受けると、この特例の対象外となり、固定資産税などが最大6倍にまで跳ね上がることになります。これによって、空き家を減らし、土地の有効活用をさせることが狙いです。

空き家をリノベーション!

 前述のような制度が整う一方で、所有者のほうでも積極的に空き家状態を解消しようと、リノベーションを行うことが多くなっています。

リノベーションとは

 リノベーションと似た言葉にリフォームというのもあります。「リフォーム」とは一般的に、老朽化した建物を新築と同じような状態に戻すことを言います。イメージとしては、賃貸物件の原状回復に近いでしょうか。「リノベーション」とは、大規模な工事を行い、建物の性能を新築時よりも更に向上させ、建物の価値を高めることを意味します。リフォームはマイナスからゼロへ、リノベーションはマイナスからゼロプラスアルファといった感じでしょうか。

リノベーション物件のメリット・デメリット

 既存のマンションや建て売り住宅は、どうしても誰もが平均的に快適になるよう、無難に設計されますが、リノベーションは、かなり大胆に改造することで、その人個人のライフスタイルに合わせて再設計します。これまでの住宅では感じられない自分だけの強いこだわりに応える満足感を得ることができます。

 こうした個性的な物件は、そこに住む人を選んでしまうため、万人受けするスタイルが好まれる賃貸などでは、まず見られない形態でした。しかし、最近賃貸においても、自分のライフスタイルを追求する人たちのニーズから、個性的な物件が人気を集めています。

 さらに、マンションを購入する場合でも、自分らしさを求め、新築のマンションではなく、中古のマンションをリノベーション前提で購入することが増えています。個性的な物件を1から新築するのと、中古を購入してリノベーションするのでは、費用は2割から3割安く済む場合が一般的です。
さらに、新築の場合は、築後15年程度で大きく価格が下落することがありますが、リノベーション物件の場合、元々が中古物件ですので、価格下落のリスクは、新築物件よりは低くなります。また、場合によっては、補助金の交付を受けられる場合もありますので、地方自治体の補助金制度も調べる必要があります。

 もっとも、リノベーション物件のデメリットもあります。中古物件をリノベーションしてますので、築年数から見ると、いずれ建て替えの時期を迎えてしまう事です。さらに、震災以降は耐震基準を満たしているかが物件を借りたり購入したりする上で重要な判断材料になりますので、耐震工事が必要になる場合もあります。そのため、せっかくコストを抑えても、余分な費用がかかることがあります。
 さらには、リノベーション物件の場合、一般の住宅ローンが利用できない可能性もありますので、ご注意ください。

リノベーション物件の例

 メリット・デメリットがありますが、リノベーション物件の広がりは注目すべきものがあります。最近注目されているのは、福岡・北九州発の「リノベーションスクール」です。こちらでは、受講生が空き家や空きビルを活用する方法を出し合い、それを実際にやってみる、そんな活動が広まっています。積極的に活動し、建物のオーナーに提案をし、それが通れば事業としてスタートします。そこには、事業として成立させるための収益性なども考慮して、オーナーにプレゼンを行うので、単に、斬新な建物に変えるだけの提案ではなく、ビジネスとして成立させているのです。

 こうしたリノベーション物件が増えることで、街を変えることにもつながっています。空き家や空き物件が多いシャッター通りが多い地方都市の中で、北九州市では、リノベーション物件が増えるにつれて歩行者数の増加にもつながり、街の活性化にも一役買っているのです。こうした試みは全国に広がりを見せ、全国の自治体でも注目されています。

まとめ

 こうしたリノベーション物件への注目や需要の高まりから、リノベーション物件を専門に扱う不動産屋もあります。物件所有者がリノベーションをする場合、大手リノベーション会社に依頼することもあれば、地元の工務店に依頼する場合、どちらも一長一短あります。
数多くの実績をもとに、システム化している大手リノベーション会社と、専門性が高く、細かなニーズに対応してくれる地元の工務店、いずれを選ぶにせよ、自分らしいスタイルの追求と、それによって生まれる街づくりの効果、こうしたものを十分に考えて、物件を生まれ変わらせ、有効に利用するようになればいいでしょう。
実際、先の北九州のリノベーションスクールでは、新たな雇用も生み出し、街の活性化にも役立っています。

つまり、リノベーションには、単にそこに住む人の個人的な思いだけでなく、街づくり、あるいは、街のコンテンツづくりの意味合いも生まれ、そこに住み、働き、遊ぶ、といったライフスタイルそのものを作り出す、そんなコンセプトで広がっているのが現在のリノベーションの全国的な広がりではないでしょうか。そこで新しい生活のスタイルや働き方、産業が生まれ雇用も生まれる。空き家が街全体を活性化する源になっているのです。そんなネットワークの1つのポイントとして、物件オーナーは積極的なリノベーションをご検討なさってはいかがでしょうか。

Pocket
LINEで送る

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL