空き家の譲渡所得は控除対象になる!空き家対策特別措置法とは?

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今どきは、結婚した後は夫婦で新しい家に住み、実家の両親とは別居の方が多くいらっしゃいます。例え自分で家を建てるときでも、両親はすでに実家があるから、と同居の話が出ずにそのまま別居で過ごしていく場合も決して少なくないと思います。そんな時代の流れから、最近では空き家の問題が浮上しています。

例えのように、両親と別々に家を構えた人が、両親を亡くした時、実家を相続します。でも、自分の家はすでにあるから実家に住み替えようとは思わない、築年数も古い上に誰も住んでいないからますます老朽化が進む、といった空き家の管理に頭を悩ませる方は多くいらっしゃいます。さっさと売却しようと思っても、売却時の税金はどうなるのか?今まで考える機会もなかったことでしょう。

「空き家対策特別措置法」と「空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例」を聞いたことがあるでしょうか?これが実は、空き家の売却時の節税になるのです。順を追って説明させていただきます。

1.空き家対策特別措置法とは?

全国各地で増え続けている空き家。これらは国や市町村側からしても、そのまま放っておかれるのは不都合です。メンテナンスがされないことによる倒壊による被害や、屋根、外壁の飛散など空き家が増え続けることで町にとっての悪影響が沢山懸念されています。ただし、保有者側からしても、築年数の古い建物は、建物自体の価値は0となり、土地だけの値段となるためなかなか納得した金額で売ることが出来ず、売却が思うように進まないといった悩みもあります。また、空き家を一旦つぶして更地にしてしまうと、通常は上に建物が乗っている状態よりも土地に対する固定資産税が増えてしまいます。

そういったことを恐れて保有者側も、誰も住まないとわかっていながら建物を壊すことも出来ずにいるのです。このような経緯から、空き家がどんどんと増えてきており、今後も増えると予測されています。

1-1.空き家対策特別措置法の概要

空き家対策特別措置法では、基本的に、市町村が空き家対策をしやすいように地方自治体向けにバックアップされた法律です。

例えば、この法律の施行により、特定の条件に当てはまる空き家に関しては、保有者に対応を求める権利を与える、倒壊などの危険性が高い場合など、状況によっては強制執行をする権利も地方自治体に与えられています。この保有者が求められる対応というのは、簡単に言えば空き家を「今の耐震基準に満たすようリフォームする」か、もしくは「解体して更地にする」ことが求められます。

さらに、これに伴い、前述のように、「更地にすると固定資産税が高くなるから」と空き家を増やす原因となっていた固定資産税の住宅用地特例の見直しも行われ、一定の基準に満たしている危険な空き家を放置していると、固定資産税が最大で6倍にも跳ね上がるという仕組みになりました。

1-2.保有者にとっての救済はないの?

ここまでの話だと、保有者は地方自治体に勧告されたら自分でお金を使ってリフォームするか、更地にして高い固定資産税を払うか、どちらかしか選択肢がなく、リフォーム費用も解体費用も解体後の固定資産税も、何もかも保有者がお金をどんどん取られてしまう…と思ってしまいますよね。

しかし、この空き家対策特別措置法の施行に伴い、2016年度の税制改正で、相続した空き家を売却した場合の所得税の軽減措置が新しく創設されました。これが一般的によく耳にする「空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例」です。従来も、譲渡所得の特別控除3000万円というのはありましたが、それはあくまでも、所有者自身が生活していた家屋の売却であることが前提でした。今回は、この2016年の改正により、相続した空き家を売却する場合でも、譲渡所得の特別控除3000万円が適用されるようになったのです。これにより、保有者の売却時に払う税金が大幅に軽減されるようになりました。

2.適用を受けるための条件は?

特別措置法は必ず適用されるものではありません。適用されるための条件がいくつか存在します。

2-1.対象の家屋とは

まず、すべての相続した空き家が対象になるわけではありません。
適用条件は次の条件をすべて満たす場合です。

・旧耐震基準で建てられた家屋
 (1981年5月31日以前に建築された家屋)
・区分所有建築物は対象外
 (つまり、マンションなどは適用対象外)
・相続する前、被相続人が一人で住んでいた居住用家屋
 (つまり、相続によって空き家になった家屋であること)

2-2.対象の譲渡方法

対象の家屋であることに加え、以下の譲渡の方法にも条件があります。
・相続のときから譲渡の時まで、居住、貸付、事業に使われていないこと
・耐震改修を行い、新耐震基準に適合する建物として売却する、もしくは、家屋を取り壊して土地だけを売却する場合
・2016年4月1日から2019年12月31日までの期間の譲渡であること
・相続の開始があった日から、3年を経過する日の属する年の12月31日までの間の譲渡であること
・売却額が1億円を超えないこと
・役所から要件を満たす証明書類を入手し、確定申告書に添付して申告すること

2-3.最大で609万円の減税

前述の条件をすべて満たし、適応を受けられた場合、控除の対象額が3000万円だとすると大体いくらくらい実際に減税されるのか?実際、相続した家は大体5年以上の期間は住んでいたことでしょうから、その場合は、長期譲渡所得に区分されます。その場合の税率で考えると、最大で609万円ほどの税金を減らしてもらえるのです。

3.ほかの税制と併用できるの?

前述した空き家対策の法律や特例はそのほかの税制と併用できるのでしょうか?

3-1.自己居住用財産を譲渡する場合の控除と併用は可能

いわゆるマイホームを譲渡した場合も、譲渡所得から最高3,000万円特別控除が出来る特例が別に指定されています。これと、今回の「空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例」は併用が可能となっています。相続した空き家を売った年と、自分の家を売った年が同じであっても、どちらも控除制度を利用できる仕組みになっています。

3-2.自己居住用財産の買換え等に係る特例措置との併用も可能

これは、いわゆるマイホームを買い替えるときに発生した長期譲渡所得の課税の特例などとも併用が可能となっています。そのほか、あまり聞きなれませんが、特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算、繰越控除、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除なども含まれます。

3-3.「自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」と「自己居住用財産の買換え等に係る特例措置」は併用不可

先で説明したこの二つの特別控除、特別措置ですが、こちらについては選択制となっているため、どちらか一方のみが適用となります。二つとも適用されることは有りませんのでご注意ください。

まとめ

いかがでしょうか?年々数が増加し、その存在が問題視されている空き家。空き家自体が増え続けると、地震での倒壊や台風での他の家への被害、思わぬところからの火事など、人がいないが故にメンテナンスもされないため、地方自治体も対応をせざるを得ません。それでもリフォームや家屋の解体など、決して安い金額ではありませんので、場合によっては相続を放棄した方が良いのでは、と思ってしまうケースもあると思います。

そんな相続人の方を救済するために、今回このような特別措置法が適用されています。期間には限りがありますので、今現在空き家を抱えている方は一度自身の持っている空き家が適用対象でないかどうか、確認して早々に手を打ってみましょう。

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