「空家等対策の推進に関する特別措置法」施行により空き家持ち主が知っておくべきこと

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 貴方のお住まいの地域では、人の住んでいる気配の無い空き家がありますか?
又、知らない間に空き家が増えていると感じる事はありませんか?
実は世の中では空き家がどんどん増えているのです。

2014年7月に総務省統計局から発表された2013年時点における住宅・土地統計調査の結果によれば、2013年10月1日時点における全国の空き家は819万6000戸と計上されており、それ以前の5年間に比べて8.3%の62万8000戸増加しているというのです。

全国の総住宅数に占める空き家の割合は13.1%から13.5%に増加しているのです。大都市圏と地方という見方をすると、3大都市圏(関東、中京、近畿)では12.3%、それ以外の地域では14.9%という空き家率で、大都市よりも地方で空き家が多いという事実が明確になっているのです。

少子高齢化や、社会構造の変化、住宅の供給過剰など、様々な要因で日本の住宅は空き家化しているというのが事実なのです。

空き家化が及ぼす社会問題

空き家。読んで字の如く、家が空いているのです。
住んでいた人がいたはずの家が無人化し、無人の家が放置されている状況を言います。
上記の統計数字で明らかな通り、日本全国で空き家は増え続けているのです。

都会よりも地方の空き家率が高いとはいえ、多かれ少なかれあらゆる地域で空き家が増えています。

地方の過疎化が叫ばれて久しい。地方から都会に人口が流出し、地域には老人ばかりで過疎化する。過疎化ばかりでなく、人の住まなくなった住宅が、どんどん増えているのです。

人が住んでいない住宅があることに気がつかなかったり、気がついていても問題視していなかったりということもあるかもしれませんが、人の住んでいない住宅は確実に問題をはらんでいます。

その問題は、いくつかの視点でまとめられます。

建築物の老朽化問題

住宅は人が生活しないと急速に痛みます。住んでいても経年劣化で老朽化します。その住宅に人が住んでいないのですから、老朽化は速度が上がります。景観上もさることながら、構造自身の問題として、老朽化した住宅は自然崩壊する危険性があります。知らない間に崩れてしまう事もあれば、雪国などでは雪かきがされない為に雪の重量で潰れてしまうケースも発生しています。

建築物が崩壊するという現象は、極めて危険性が高いのです。防災問題とも言えます。

 

周囲への環境問題

老朽化した住宅の存在は景観上地域に悪影響を及ぼします。

建築そのものの場合もあれば、植物が生い茂る景観や、敷地をはみ出して近隣や道路の障害になる問題、ゴミが投げ入れられる可能性もあり、動物が住みついたり、虫が発生したりもします。

景観問題、衛生問題とも言えます。

 

防犯上の問題

人が居住していないことが明確な空き家に、浮浪者が住み着いてしまう危険性を否定できません。犯罪の温床にもなりかねない問題です。

第四に、経済上の問題。人が居住していることを前提としている固定資産税の特例措置もあれば、誰も住まわないことで、何の経済効果も生まれない。売却や賃貸をすることで経済効果が生まれるのに何も生まれないのです。

この様に、空き家が増加し、放置され続けることは、大きな社会問題を生み出しているのです。

 

「空き家等対策の推進に関する特別措置法」とはどんな法律なのか

空き家対策の法制

社会問題化しつつある空き家を政策的に解決するべく、法律が施行されました。

この法律は「空き家等対策の推進に関する特別措置法」と呼ばれる法律で、2015年5月26日に全面施行されました。つい最近のことです。
それではこの法律がどんな内容の法律なのか、ポイントをわかり易く解説してみようと思います。

簡単に概要をコメントすると、全項で筆者が指摘した、空き家が原因で顕在化している社会問題の解決を目的とした措置を実行する法律と言うことです。

 

これ以降は、この「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を略して“本空き家法”と記載致します。

空き家とは

本空き家法では、空き家を二つの定義で規定しています。
一つは“空き家等”、もう一つは“特定空き家等”という表現で規定されています。

先ず最初の“空き家等”が何を意味しているのかご説明しましょう。
何せ空き家ではなくて“空き家等”なんです。等が微妙です。つまり空き家だけでなく、空き家に付随している領域まで規定しているのです。

《住宅とそれに付随する建屋であって、居住していないか、もしくは何も使用されている状態で、建築物だけではなく敷地も含む》ということです。

つまり、家と物置や離れなどが、誰も住んでいない状態、もしくは住んでいない状態である上に使われている形跡も無い状態。その上で、植栽や垣根や塀や門扉など、敷地に根ざしている物も含む。ということです。

次に、“特定空き家等”が何を意味しているのかご説明します。
これは前述の空き家等に加えて、《そのまま放置していると危険で、不衛生で、景観を損なう状態。つまり近隣に迷惑な状態の家》ということです。

所有者の義務

この“空き家等”に該当する家の持ち主は近隣に迷惑が及ばない様にしなければなりません。
本空き家法で規定している内容は、極めて通常の概念です。

つまり、家の所有者は《ご近所迷惑にならないように、空き家のメンテナンスを欠かしてはならない》ということです。

読むと当たり前のことなのですが、実際この当たり前のことができていない空き家が増えて、ご近所迷惑が増加しているので、このような法律ができたわけですから、空き家の所有者は、この義務をよく理解して、ご近所迷惑にならないように心がけなければなりません。

 行政施策

 一方で、空き家の持ち主だけでなく、行政にも施策を求めて、空き家問題の解決を推進させています。国には「基本指針の策定」を求め、都道府県には「市町村に対する助言と援助」を求め、市町村には「空き家等対策計画を定め、協議会を組織する」よう求めています。

つまり、家主だけに解決を求めるのではなく、行政にも役立ちを求めています。これは、問題解決に向けて官民両面作戦とも言えますが、義務を守らない空き家の家主に対する、規制を強化する意味あいがあるのです。

以降に説明する措置を行政が取ることで、義務を全うしない空き家所有者をけん制する役割から、行政にも施策求めているのですから、空き家所有者のみなさんは注意が必要なことです。

 立入り調査

本空き家法では、行政施策の延長線上に、問題となっている空き家への立入り調査ができる様に規定されています。
持ち主は誰か、住んでいるのか否か、管理は適切に行われているのか、立入り調査を行ってその事実関係を明確にする意図から規定されていると言えましょう。

その権限は市町村長に与えられており、逆に言えば市町村長が当該市町村の空き家問題に対する責任を負っているとも言えるわけです。
最大の権限は、職員や委任者をして当該空き家に立入り調査をする権限が与えられていることです。

空き家の所有者がこの立入り調査を拒んだ場合は、20万円の科料に処せられてしまいます。
空き家を放置することで、近隣や地域社会に及ぼす防災・景観・衛生・防犯面での問題を断ち切り、所有者にご近所迷惑にならないようにさせる意図があります。

空き家情報利用権

空き家が存在していても、現在の所有者を特定する為の手段が不足して、所有者にたどり着けないというケースが多々ありました。つまり、登記簿や住民票の情報からは所有者が特定できないケースです。

この所有者情報特定の為に、今までは実施できなかった固定資産税の課税情報を、この法律によって利用できるようになりました。これは都知事と市町村長に認められていますが、この情報以外の情報についても市町村長は県知事に対して情報公開を求められるようになりました。

つまり地方自治体の長は、空き家問題の解決の為に、空き家所有者の情報を様々な手段で活用しやすくなったのです。全ては、空き家の社会問題解決の為で、今まで空き家の所有者にたどり着けなかったケースでも、自治体の情報利用権を活用して、所有者を特定し、解決に導くことをし易くしていると言えます。

特定空き家除去

特定空き家に関して、《市町村長は所有者に対してご近所迷惑にならないようにしなさいと助言又は指導、勧告、命令することができる》のです。
ご近所迷惑な特定空き家を放っておくわけにはいけないので、市町村が所有者に働きかけをするものです。

段階的な是正措置で、助言又は指導→勧告→命令と、徐々に是正指導は重くなります。

それでも特定空き家の所有者が言うことを聞かずに、是正措置を取らない場合は、50万円の科料に処せられてしまいます。

その上で、《命令に従わなかったり、十分な措置がなされてなかったり、期限までに完了の見込みが無いと判断された場合は、行政代執行が行われる》ことになります。
つまり所有者に代わって自治体が特定空き家の状態をご近所迷惑にならない状態にすることになり、その費用は所有者が負担しなければならないわけです。

特定空き家のご近所に対する悪影響を排除する目的、つまり空き家を放置せずに、空き家は空き家なりにご近所迷惑にならないようにしておくことが求められているわけで、それができない所有者に代わって自治体が作業を強制的に行うことになるということです。

全てはご近所迷惑の防止措置ということです。
ちなみに、命令が出された特定空き家には、その旨が記載された標識が設置され公示される結果となります。

この家は所有者が誰で、命令に従わなかったので、行政手続きで作業対象になっていますと、ご近所に向けて看板が出てしまうということです。こうしてはいけないですね。

税制措置

本空き家法では、空き家所有者による改善措置と、地方自治体による改善措置と共に、国に対しては必要な税制上の措置を講ずるように求めています。

その上で、平成27年1月14日閣議決定された平成27年度税制改正において、住宅用地の固定資産税及び都市計画税について、勧告の対象となった特定空き家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する措置を講ずることになったのです。

これはどういう意味があるのでしょうか?

元々固定資産税は、居住している家屋についての土地は、更地である場合に比べて最大で6分の1に優遇する措置が取られているのです。つまり通常の住宅は、建物が無い更地に比べて土地の固定資産税負担は少なくてすんでいるのです。

このような税制優遇策が存在することから、空き家になっている住宅の所有者は、居住している人がいないのに建物を解体して更地にすることなく、空き家のまま放置し続けているという側面が、前々から指摘され続けていたのです。つまり税制面から見た空き家の発生要因になっていたということです。

今回の本空き家法の規定により、この部分にメスが入り、特定空き家として放置している所有者には固定資産税の優遇措置を除外することにしたというわけです。

では、空き家の所有者は皆固定資産税の優遇措置が除外されることになるのかというと、そういうわけではありません。

あくまでも限定的な特定空き家の所有者に限られます。

つまり、前項で記載した行政指導のプロセスの中で、ご近所迷惑にならないようにしなさいと助言又は指導、勧告、命令がなされるということを書きましたが、勧告が出された所有者がこの優遇措置の除外者になるということなのです。

市町村からの助言指導を受けて、特定空き家の対策を図った所有者はこの除外対象にはなりません。

ですから、万が一貴方が特定空き家の所有者で、今までその家を放置していたとしたら、今後は早急に家のメンテナンスを施し、植栽や塀などのご近所迷惑になるような状態を取り除いて、市町村から助言指導がなされないようにしておくことが求められます。助言指導までならまだ良いのですが、これを無視して勧告を受ける事態になると、この時点で固定資産税の最大6分の1という優遇措置が除外されて、最大で6倍の固定資産税を払わなければならない羽目に陥ってしまいます。

これは注意が必要です。

ただ、これは税制的に特定空き家を放置している所有者に対する制裁措置ですから、一般常識を持ち合わせた空き家所有者さんであれば、ご近所迷惑になるような状態までメンテナンスを放棄することは無いと思うのです。

とはいえ、例えば仕事が忙しく、自宅から遠くに所在する特定空き家に行く機会が作れず、うっかり放置してしまうなどということは図らずもある可能性がありますので、ご注意が必要です。

 特定空き家

 勧告の対象となった特定空き家は、固定資産税の課税標準の特例措置の対象から除外されてしまうとなると、勧告される特定空き家とはどんな状態を言うのか気になりますよね。

先ず空き家ですが、《住宅とそれに付随する建屋であって、居住していないか、もしくは何も使用されている状態で、建築物だけではなく敷地も含む》という風にご説明しました。

居住していないか、使用されていない状態というのは、年間を通して使用実績が無い状態であると、国が空き家の判定基準を基本指針で示しました。その使用実績は様々な見地から客観的に判断されるとされていますが、電気・ガス・水道が使用可能な状況にあって、なおかつ使用した実績が請求書等で明確になっていると、客観的に居住している、もしくは使用していると主張がしやすでしょう。

その上で、勧告の対象となる特定空き家に該当しているかどうかですが、《そのまま放置していると危険で、不衛生で、景観を損なう状態。つまり近隣に迷惑な状態の家》を特定空き家とご説明しました。この部分は数値化できない領域と言わざるを得ませんから、社会通念上客観的に見て近所迷惑な状況ではない状態にしておく必要があるということになります。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」施行により空き家持ち主が知っておくべきことのまとめ 

 

以上が、空き家等対策の推進に関する特別措置法関連情報の骨子です。今後空き家問題は、近隣への迷惑が、自分にも返ってくる結果にもなりかねません。

一番大事なことは、社会に迷惑をかけずに生きれば、自分も安らかだということだと思います。

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