大家さんを悩ませる時代錯誤の法律 借地借家法とは?

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土地や家を貸す際は、賃貸契約以外にも借地借家法に従うなど様々な法律が絡んできます。一方で、正当な自由があっても大家が入居者を退去させられないケースも存在し、経営上のリスクになることがあるのです。

1.借地借家法とはいったい何なのか?

借地借家法は土地や家を貸す貸主と借主の相互の権利を保障するためのものです。その中には家賃の滞納があっても容易に退去を迫れないなど、大家にとっては不利ともいえる内容が含まれています。

1-1.どうして借地借家法ができたのか

借地借家法ができたのは、社会的弱者である借主の権利保護のためです。借地借家法制定以前は、貸主の一方的な都合で賃料を上げることや、退去を迫ることが可能な状態でした。また、病気や失業状態になった際に一時的に滞納が生じた際に、すぐに退去を迫れるような状態では安心して住み続けることができなくなります。不測の事態があっても借主の権利を保護することで、一方的になりがちな力関係の解消を目指そうとしたのが借地借家法成立の背景です。

借主は生活に困窮した際も住む家を失わなくて済むというメリットがありますが、大家からすれば家賃の回収が遅れるということでもあります。そのため、支払いトラブルに発展するケースが存在するのです。

1-2.悪質な入居者がリスクに

借地借用法は借主の権利を保護する面が強く、その保護力の強さを悪用する入居者も生んでいます。例えば、家賃を1月や2月程度滞納しても容易に退去させられないからです。しっかりと家賃を納めることを前提に生活をする人が大半ではあるものの、借地借家法を逆手にとって、支払いが遅れることを前提として生活をしている人も存在するのです。

問題は、悪質な入居者であることがわかっても、すぐに退去は迫れないことです。騒音やペット不可物件でペットを持ち込むなど、近隣トラブルを引き起こした際であってもすぐに急性退去させることはできないのです。場合によっては裁判が必要になり、より経営を圧迫する原因となります。裁判を起こすことが割に合わないことを理解した上でトラブルを繰り返す入居者は、真面目に不動産経営を行う人にとって頭痛の種なのです。

近所迷惑を繰り返す人間がいれば、引越しが相次いで入居者が減り、空き室が増えるという事態も起こりえます。悪質な入居者の存在は経営上のリスクとなることに理解が必要です。

2.不動産の価値に悪影響を与える側面も

悪質な入居者の存在は、不動産の価値にも悪影響を与えます。想定される利益が少なくなるだけでなく、売却時の査定額などにも影響を与えることがあるのです。

2-1.収益性が悪化する可能性も

悪質な入居者の存在は、空き室率を高めるなど様々な範囲に及びます。収益性が悪化する原因となるため、問題がある場合は早めに対処する必要があります。対処のためには弁護士を雇うなど専門家への依頼が欠かせないため、費用面を圧迫する要因になります。

しかし、問題解決のために動かなければ現状維持が続いてしまう可能性があり、経営上の赤字が発生する可能性も高まります。賃貸物件の運営には維持管理費がかかるだけでなく、年月とともに建物自体が劣化することも忘れてはいけないポイントです。入居者を増やすためにも様々な手を打たなければ、不動産の価値は低下し続けるのです。

2-2.不動産としての価値も低下する

収益物件の取引を行う場合は、入居率が重要な鍵を握ります。これは入居率が高いという実績があれば、多少高値でも売却できる可能性が出てくるからです。逆に入居率が低く、収益性が低い物件であれば安くても誰も買わなくなる可能性が高くなります。

問題は入居者が悪質であるというリスクは外から見えづらい点です。一度入居率が低いというイメージがついてしまうと不動産取引に大きな障害が生じ、リフォームなどをしないとイメージを刷新できない可能性も出てきます。出口戦略を考える上でも大きな影響が出てくるのです。

3.どのようにカバーするかが重要に

悪質な入居者を防ぐための仕組みの1つが、敷金と礼金の存在です。しかし、入居者の負担が重く、家賃の上昇に繋がりかねないなど借主にとっても不利益となりかねないのです。

3-1.敷金礼金でリスクを回避する

悪質な入居者が入るのを防ぐために敷金と礼金を用いるのは一般的です。敷金を多めに取っておけば、ペット不可物件でペットを持ち込むなどのトラブルがあっても、壁の張替えなども含めて敷金から修繕費をまかなうことも可能だからです。また、悪質な行為を働けば敷金が戻ってこなくなる可能性が高くなるのもポイントです。敷金の返金は一般的な習慣ですが、あくまで修繕などを行って残った費用を返金する形になるからです。

ただし、敷金を高めに設定すれば、それだけ入居率に影響する可能性がある点に理解が必要です。都市部を中心に敷金礼金を下げることで入居率を高めるケースは増えており、中にはゼロにしてしまう場合もあります。もちろん退去時に修繕費用などを請求するのは当然の権利といえますが、相手側の理解が足りなく、トラブルになる可能性あります。それぞれのリスクを理解する必要があるのです。

3-2.全体的に家賃を高めにせざるを得ない場合も

悪質な入居者ばかり入ることはほとんどなく、あくまで割合で発生することを想定するのが基本になります。しかし、割合で発生することを考えた場合は、全体のコストのバランスで想定せざるを得ず、家賃の平均額を上げるなど工夫をすることでしか補えないのです。

悪質な入居者を全く想定せずにぎりぎりの家賃で運営をしようとすると、トラブルがあった際に大きな出費を強いられる可能性があるのです。万が一を想定した上で調整を加える意識は重要になります。

さいごに

借地借家法は貸主と借主が対等な立場になれるように双方の権利を保護する法律ですが、借主の権利が強すぎるという指摘も多いのが現実です。悪質な入居者が存在することを理解し、いざという時に備える必要があります。

完全に回避する方法はほとんどないことを理解した上で、リスクをどの程度受け入れ、敷金や礼金、家賃といったコストでコントロールする意識が大切になるのです。

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