賃貸の期間を決めて短期間の入居者を募集する|定期借家契約とは?

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空き家をご所有の方の最大の悩みは、空き家の管理です。人が住んでいないと庭の雑草がのび、そこに発生した虫たちを食べるクモが家の中に侵入し、また、通水をしていないと排水管にたまった水が原因で腐臭が発生し、錆びた排水管が腐食して水漏れは天井、柱へと広がってしまいます。

「相続で突然、空き家をもらうことになってしまった」
「転勤のために空き家になってしまった」

空き家の管理について悩みを抱いている人は多いです。そのような方に、ご自身が住むまでの間、人に貸すことで実質的に空き家を管理してもらい、さらに賃貸収入まで入ってくるという、定期借家契約の方法をご紹介します。

1. 空き家管理のお悩み

空き家の管理についていろいろなお悩みを抱えている方はたくさんいると思います。今回は実際にこんな悩みを抱えているという実例をもとに定期借家契約の方法をご紹介します。

1-1. 数年後に建て替えを予定してるが、建て替えが始まるまで短期間でも家を貸すことはできるの?

できます。人に家を貸す契約のことを借家契約といいます。後でも説明しますが、借家契約には、普通借家契約と定期借家契約の2つがあります。普通借家契約は更新が認められているため、実際は借主はずっとそこに住めてしまいます。貸主は借主を追い出すにあたっては、相当な苦労をしなければなりません。他方、定期借家契約は更新が認められておらず、契約期間が終了したら、借主は出ていかなければなりません。定期借家契約を結べば、建て替えの直前まで人に貸すことができます。

1-2. 転勤の間、家を貸して収入を得たい

これも定期借家契約を締結すれば、転勤の間だけ賃貸収入を得ることが可能になります。ただ、転勤の期間も不確定要素が強く、当初は2年だけと言われていたにもかかわらず、「もう2年だけお願い」と上司から頼まれる場合もありえます。定期借家契約は更新が認められていないため、契約期間を2年とした場合、契約期間終了と同時に借主は出ていかなければならなくなってしまいます。しかし、定期借家契約は再契約を結ぶことはできますので、もう2年転勤することが決まった時点で、再契約を結べば問題はありません。

1-3. 将来子供が家庭を持ったら住む予定だが、空家にしておくと家が傷むので人に貸したい

こちらも、定期借家契約で問題は解決です。子供が家庭を持つことは不確定要素が強いです。しかし、「5年になるのか10年になるのか分からないから普通借家契約でもいいか」と考えるのは間違えです。普通借家契約は借主の味方であり、更新が認められているため、借主を追い出すのに立退き料を払わなければなりません。反対に、定期借家契約で、都度再契約を締結するという形をとれば、問題ありません。

2. 定期借家契約を利用して賃貸にできる

ここでは定期借家契約を利用するにはどうすればよいか。また注意する点などについてご紹介します。

2-1. 定期借家契約をする際の流れと注意点

定期借家契約はどのように行うかについて説明します。まず、契約内容について考えます。インターネット上に定期借家契約書のひな形がありますので、そちらを使われるのがいいと思います。ただ、注意しなければならないのが3点あります。

①賃貸借期間を一定の期間にする
例えば、「建物を3年間のみ賃貸する」というような形です。賃貸借期間を一定のものに定めなければ、定期借家契約は無効になります。

②「契約の更新はしない」と書く
この後に説明しますが、通常の借家契約では契約の更新が認められていますが、定期借家契約の旨みはまさに契約の更新が認められていないことにあります。

③契約書のタイトルを「定期借家契約」とする

契約内容が定まったら、これを公正証書等の書面で契約をする必要があります(借地借家法38条)。公証人役場に行って、元裁判官の公証人の先生に書面にしてもらう方法が一番ですが、それでは契約書作成費用として約5万円ほどかかってしまいます。安く抑えたい場合は、公正証書によらずとも、書面にしておけばそれで問題ありません。

契約を締結する際には、貸主は、借主に対して、①契約の更新がないこと、②契約期間の満了により借家契約が確定的に終了すること、③契約の終了年月日について書面により説明しなければならない義務が課されています(借地借家法38条2項)。

2-2. 普通借家契約との違いは

定期借家契約は、普通借家契約の問題点を克服した契約制度だといえます。

普通借家契約は、更新が認められています。ですので、普通借家契約で、貸主が借主に対して「解約したい」と申し出た場合、借主としては更新してそこに住み続けたいという期待・利益があり、これを保護する必要があることから、貸主に、契約を終了させても仕方がないという「正当な」理由がなければ解約は認められません(借地借家法28条)。

解約理由が「正当」かどうかは、貸主側の事情(契約を終了させて自分が住みたい、建物が老朽化してきたので解体したいなど)だけでなく、借主側の事情(長年、生活の拠点となっていたなど)も考慮して判断され、どちらかというと借主側の事情にウエイトが置かれて判断されます。

ですので、普通借家契約の場合、貸主が「もう貸すのはやめたいから出て行ってくれ」と言って契約を終了させることはほぼ不可能です。このような場合は、借主側の事情を慮り、立退き料として家賃半年分近く捻出しなければならないことになります。

他方、定期借家契約には更新がありませんので、契約期間が終了した時点で契約は終了します。更新がないため、借主のそこに住み続けたいという期待・利益というものは保護されず、したがって、契約終了にあたって貸主側に正当な理由があることは要求されません。もちろん、立退き料も払う必要はありません。契約が終了すれば、貸主は明け渡さなければならないのです。

まとめ

空き家となってしまった家は、人が管理しなければすぐに老朽化していきます。空き家管理サービスを行っている業者に任せると、代金を支払わなければなりません。しかし、人に貸すという形で空き家を管理すれば、反対にお金(賃貸収入)が入ってきます。

では、どのような賃貸借契約を結べばよいか?

普通借家契約の場合、契約終了にあたって、立退き料を払わなければならない可能性が高いです。ですので、空き家を一定期間だけ誰かに貸したいというときは、定期借家契約の方が断然よいです。

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