一戸建ての賃貸は色々なところで活用されている

Pocket
LINEで送る

一戸建て賃貸の活用が広まりつつあります。

賃貸住宅といえば値段が売りの学生向けのアパートや、狭くとも都心に近い単身者向けのワンルームであったのは過去の話、近年ではファミリー向けの一戸建て物件が賃貸市場に多くみられるようになってきました。

以前では住宅を購入するしかなかった条件が手に入るようになっています。広めの居住空間や快適な居住性。新しい水回りや住居設備、駐車場や庭のある暮らしが賃貸市場に出始めているのです。

賃貸市場の状況が変わってきた背景としては、居住者のライフスタイルが変化していることがあげられます。夫は都市部で勤務し、妻が戸建で子を育てるといった、核家族と専業主婦を前提としたライフスタイルで子育てをしていたライフスタイルが変化しているのです。

戸建ての持ち主である子育てを終えた夫婦が現在では都市部で利便性の高いマンションに引っ越してしまい、子育てを行ってきた戸建が空き家となっているのです。

そのまま不要となった一戸建てを空き家にしておくには勿体ありません。

行政からの後押しも手助けとして、民間の業者が一戸建ての空き家を使って新たなビジネスを始めています。具体的には簡単なリフォームをしてファミリーに貸したり、必要な設備を導入してシェアハウスにしたり、商業地の一戸建てであれば店舗物件の用地として建物はそのままで賃貸されていたりといった、新しいビジネスとして一戸建て賃貸が活用されているのです。

小資本ビジネスとしての一戸建て賃貸

一戸建てを賃貸にする、というのは不動産ビジネスの一種です。

不動産ビジネスに取り組むというと、一般的にリスクも高く巨額な現金やローンを組む必要があるのではないかと思われがちですが、それは新築の不動産を自分で始める場合です。

新たに土地を購入してアパートやマンションを新築するとなれば、土地の来歴調査から始まり、マーケティング調査、人口調査など時間をかけて調査し、お金も現金の用意に加えて、数千万円から数億円の借り入れ準備、さらに30年以上の長期に渡るローンを返済する、といった非常に規模もリスクも高いビジネスとなります。

その一方で35年ローンの終わった郊外の戸建てを賃貸にする場合などでは条件は全く違います。既に地盤や豪雨などについても知識はありますし、周辺の状況についても十分すぎる程知っています。

さらに家に手を入れる場合も、水回りなど最小限のリフォームを行えばOKです。リフォームも数千万円かけるような巨額の物は必要ありません。

万一手持ちにお金がなくとも、リフォームローンであれば低い利率で金融機関も取り扱ってくれます。実際に借り手を探すにも駅前の不動産屋に賃貸の希望を出しに行けばそれで終わりです。

1件で不安があるのならば、数件の不動産屋を回れば問題ありません。

このように、空き家をという現在ある住居を活用して始める一戸建て賃貸は小資本でも始められるビジネスとして注目されているのです。

戸建てのリサイクルよりもリユースを

ビジネスの世界で環境負荷、というキーワードが広く聞かれるようになってきました。ビジネスを行う上で、単純にエコロジーな方がよいのはもちろんですが、事業の継続性を測る指標として環境負荷が考えられています。
いわゆる焼畑農業のようなビジネス、一見作業の効率性はいいけれども、ビジネスを支えている周辺環境を焼き尽くすようなビジネスは長期に渡って続かないというのが現在の常識です。
不動産をビジネスにする場合、この概念をしっかりと持っておくことが必要です。

作って壊すリサイクルよりも、一度作ったものに手を入れて新しい使い方を考えるリユースのほうが環境負荷は少なく、ビジネスとして長期に存続できる。一戸建て賃貸もこのような考えに基づいているビジネスなのです。
つまり古くなった家を壊してどんどん新築を建てるには、新たな資源を大量に投入する必要があります。
木材一つとっても育てるのに長い時間がかかったものです。
そのため、たとえ自分にとって住宅が不要になったとしても、すぐに解体して廃棄してしまっては環境に対する負荷が非常に大きくなります。

手間をかけて自分で補修したり、プロに頼んでリフォームしたりすることで、まだ住居として活用できるのではないでしょうか。自分が不要だからといってすぐに取り壊さず、住宅の命を長くする、それが一戸建て賃貸は新しいビジネスとして人気がある理由なのです。

一戸建て賃貸の実務は周辺状況の調査から

空き家を一戸建て賃貸として活用する場合、まずは周辺状況の調査から始めましょう。長く住んでいて周辺の状況を分かっているつもりでも、気付いたら大きく変わっていた、なんて場合も多く見られますので、活用の際は必ず再度チェックすることをお勧めします。新たに一戸建てを購入して賃貸を始める方は自分が引っ越しするつもりでチェックするといいかもしれません。

具体的には、その地域は現在どんな土地なのか、将来どのような変化が考えられるのか。住宅の建物はどの程度しっかりしているのか、上下水はどのようになっているのか、学校やスーパーなどの生活に必要な施設はどの程度あるのか、などなどです。もちろんこのような調査は不動産のプロに任せることもできるのですが、必ず自分の目でチェックすることをお勧めしています。可能ならば晴れた日と雨の日の2回がベストです。最近のゲリラ豪雨などは今までの状況では見られなかった被害を出す場合がありますので大雨の際のチェックは怠らないようにしましょう。

夜間調査の重要性

住宅の周辺調査は、必ず夜間調査を行いましょう。場所によっては昼間と夜間で人が大きく入れ替わり、想定外の状況が発生することがあります。飲み屋街から駅までの中間に住宅が位置する場合などは、夜中に酔った歩行者が家の前で騒ぐ、というトラブルも起こりえます。
調査の際は、日中だけではなく必ず夜間も調査を行いましょう。

事例として、大学の近くにあった空き家を学生目当てに賃貸に出してもまったく決まらなかったというお話をオーナーから伺ったことがあります。大学の近くで一見よさそうにみえる住宅だったのですが、夕方の6時ごろになると大学から帰宅する学生が道路一杯に広がってしまい、車両の通行が全くできなくなるほどでした。毎日同じ時刻に道をふさがれてしまっては不便極まりありません。このように時間によった住環境の変化をチェックするために複数回時間を変えて環境をチェックすることがビジネス上のリスクを減らすには必要です。

一戸建ての賃貸が注目されている訳

一戸建ての賃貸が注目されている理由の一つに、リフォームが容易であることがあげられます。
どんな住宅も空き家からそのまま賃貸に出すことはできません。補修を行ったりリフォームしたりして初めてビジネスとしたお金が取れる形になります。
そして高層マンションなどに比べて一戸建ては実はこの手のリフォームが簡単なのです。

一戸建てと高層マンションのリフォーム比較

一戸建ての家屋は木造の在来工法という作られ方をしている場合が普通です。木材を柱にして、壁、屋根、天井を作る非常に一般的な工法のため、経験のある技術者さんや業者さんも非常に多く存在します。
街中の工務店で在来工法を苦手とするような工務店はほぼありません。
そのため万一工事中にトラブルが発生しても、どのようなトラブルであっても大体対応方法は既に開発されていますし、伝手をたどって先人の知恵を借りることは簡単です。
解決できない状況はほぼない、と言い切っても問題ないでしょう。

それに対して、これが高層マンションであると、まったく話は違ってきます。ゼネコンの技術の粋を集めて作られた高層マンションは、その当時の最先端技術が使われています。
その後メジャーになった技術であればいいのですが、試験的に使われてその後流行しなかった技術などもたくさん含まれているのです。そうすると、リフォームしようにもちょっと工務店に相談、というわけにはいきません。
ゼネコンの技術がわかるところがどこなのか、という視点から業者を探す必要が出てきますし、そもそも集合住宅なのですからリフォームするにもマンションの規約に従わなくてはいけません。

リフォーム費用の押さえ方

リフォームの費用を抑えるコツは、発注前に予算や項目を明確にしておくことです。
不動産ビジネスを行おうとしているのですから、業者にお任せで詳しいことは丸投げ、ではいけません。参考書を手に入れるなり、雑誌でイメージを固めるなりご自身の要望と予算をなるべく固めてから進めましょう。
どうしても不安ならば、知人や友人に自宅をリフォームした方は一人くらいはいるのではないでしょうか。
どの程度の金額でどんなものができるのかを、一度見せてもらってはいかがでしょうか。費用をかければかける程いいものは出来上がります。
しかしあくまでビジネスなのですから、回収の見込みを考えてリフォームは行いましょう。

セルフリフォームの範囲

戸建てビジネスに新たに参入する方で、自分ですべてリフォームを行ってコストを削減したいと考えている方も多いようです。しかし、すべてをセルフリフォームするのはあまりお勧めしていません。
空き家を使用できるようにするリフォームはかなり高度な範囲に入るため、途中で挫折する方も多いからです。
やるにしても、失敗が少なく危険性の少ない壁紙など内装の一部をセルフリフォームするにとどめて、それ以外はプロにお任せすることをお勧めしています。特に電気やガスなどは免許も必要ですし、万一の際には居住者の命にかかわります。セルフリフォームして見た目のコストを下げても、後からトラブル対応に時間がかかってはまったく意味がありません。

セルフリフォームは実は時間コストが非常に高いのです。確かに出ていくお金は一見少なく見えるのですが、自分でリフォームを行うことでプロに任せた場合よりも長く時間がかかった場合、その分の家賃収入は消えてしまいます。
プロに任せて1か月、自分でやって3か月であれば、見た目の支出は少なくても、2か月分の賃料は手に入らないのです。どうしても金銭的な制限が強いので一円でもコストを下げたい、という方は別として、プロにリフォームを任せることで一日でも早く賃貸を開始することをお勧めしています。

配管の種類を確認しよう

給排水の配管の種類を普段の生活で意識することはほとんどないのではないでしょうか。

しかしリフォームを行う上で非常に重要なポイントの一つがこの配管の種類です。古いマンションなどでは鉄の配管が使われているものがまだ存在しています。
当然ですが、鉄はさびます。さびて古くなった配管は好感の必要がありますが、現在のように交換を前提に作られていない配管はコンクリートの中に埋め込まれていることが多く、交換がほぼ不可能なものも存在します。
その点戸建てであれば配管が多少劣化しても床下に潜れば交換は比較的容易です。
万一床下に潜れなくとも、外から配管を回して、壁に穴を空けるなどの対応も可能となります。現在主流のポリ管ならば曲げるのも簡単ですし、施工もはるかに楽になっています。後から新規配管も1-2日で終わるのが通常です。

こういった交換工事の容易さも戸建て賃貸が新規ビジネスとしての人気理由の一つです。

相続までのつなぎとしての戸建て賃貸ビジネス

郊外で自分や両親が住んでいた家を持て余している、けれど感情的に売却はしたくない、という方も多くいらっしゃいます。こうした方にも戸建て賃貸をお勧めしています。
自分自身が育った実家であるため思い入れは強いのだけれども、空き家にしておくのも手間がかかってしまいます。
毎月風を通したり、庭の草をとったりと住んでいない家のメンテナンスをするのは非常に手間のかかるものなのです。
外注するにもお金がかかるし、持て余している方は、賃貸にしてしまうのが一つの手です。
良い方に借りていただければ、ある程度の手入れは借り手が行ってくれますので自分の手間は省けます。
将来的に両親の世代から自分が相続するまでの時間。
空き家を放っておくのではなく、積極的に資金を稼ぐこと相続にかかる費用など金銭部分の足しにすることもできます。
家に関わる費用を家自身に稼いでもらうというビジネスの形をお勧めしています。

一戸建ての賃貸で規制緩和が始まった

空き家についての法整備が進みつつあります。税制に関しては今までよりも厳しくなっています。今まで条件を満たし手さえいれば、建物の建築されている土地の固定資産税は、更地に比べて6分の1になるという減税措置が取られていました。しかしこれが空き家を危険なまま存続させているインセンティブになっているとして方針が見直されました。
倒壊などの危険性がある特定の空き家については、自治体の判断の元、減税措置がなくなるとの方針がとられています。それと同時に空き家活用に関しては、自治体ごとに規制緩和や制度的な後押しが始まっています。
今まで旅館並の防火性能を間仕切りに要求されていたのが、緩和されるなど地域ごとによって空き家活用の後押しが始まりつつあります。

シェアハウス増加の背景

シェアハウスといった概念が近年広まりつつあります。以前ではそもそも法律がシェアハウスという住み方を前提としていなかったため、間仕切り壁にホテル並みの防火性能を求めるなどの厳しい規制がなされていました。

同時期にいわゆる脱法ハウスのような、押入れの一つを無理やりに居室に改造したシェアハウスが報道され、問題となっていたことも影響していたと思われます。これらはシェアハウスといった概念がまだ広まっておらず、それぞれの仕組みも未発達であったため、このような事例が発生していたと思われます。
火災を防ぐことは重要ですが、あまり規制をしすぎると柔軟な経済活動は衰えてしまいます。
現在では各自治体に規制を見直す方針がとられており、空き家をどの様に活用するかは自治体の運営に任されています。ぜひ住居のある自治体の空き家活用方法を広報で確認してみてください。

空き家バンクの活用事例

空き家の活用として自治体も制度的なバックアップを始めました。

空き家バンクと呼ばれるシステムがその例です。民間ではなかなか賃借人を探しにくい物件でも自治体が仲介役としてバックアップしてくれます。戸建て賃貸をビジネスとして始めたくとも、不動産業者に伝手がない、と考えている方にはお勧めできるシステムです。既に戸建を持っている方に向けたシステムではありますが、新しいことにチャレンジはしてみたいけれども不安な方には公的なバックアップは活用できると思います。

 

Pocket
LINEで送る

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL