空き家保有者必見!費用請求の可能性もある「空き家対策特別措置法」とは?

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両親が亡くなり、実家をいまだ放置している人も多いと思います。「空き家対策特別措置法」という法律が施工された今、適切な対策を取らないと、勝手に取り壊されるだけではなく、その費用を請求されるかもしれません。

空き家をお持ちの方は知っておかないと、とんでもないことになってしまうかもしれない法律なのです。

空き家対策法とは、いったいどのような法律なのでしょうか。ぜひ、この記事でしっかりとした知識を身に着け、無用なリスクを避けてください。

1.空き家対策特別措置法の概要

1-1.特定空き家とは

空き家対策法とは、簡単に言えば、倒壊する可能性のある危険な空き家を、「特定空き家」と指定することによって、所有者に空き家の処分を促すための法律です。もしもその法律に従わない場合は、様々なペナルティーが科せられることになり、最終的には勝手に空き家を解体され、かかった費用を持ち主が負担しなければならないということにもなってしまう、空き家を持つ人にとっては恐ろしい法律です。

しかしそれは全ての空き家に対して行われるものではありません。あくまで、「特定空き家」に指定された空き家に関してのみです。極論を言えば、特定空き家に指定されなければ、どれだけ空き家を放置していても問題はないということになります。では、いったいどのような空き家が、特定空き家に指定されてしまうのでしょうか。

1-1-1.倒壊などのような危険があると判断された空き家

これは、このまま放置していれば、高い確率で倒壊してしまい、誰かが怪我をしてしまうというような危険があると判断された空き家のことです。基礎部分が破損・腐敗しているというように、建物としての根本的な部分に重大な欠陥がある場合、特定空き家として指定されてしまいます。また、屋根などが破損しており、風によって飛ばされそうな場合などもこれに含まれます。つまり、誰かが怪我をするかもしれないほどの破損が空き家にある場合は、ここに分類されるということです。

1-1-2.衛生上有害だと判断された空き家

空き家というものは放置しておくと、ネズミなどの住処になってしまうことがあります。そのようなことになると、周辺の家にまでネズミが大量発生してしまい、不衛生な状態になってしまうのです。

ネズミは病原菌の塊りといっていいほど、不衛生な生き物です。有名な菌でいうと、サルモネラ菌やペスト菌などを持っていることもあるため、その空き家の不衛生さが原因となり、間接的に死者を出してしまう可能性もあります。だからこそ、特定空き家だと指定され、撤去や正しい管理が急務と判断されるのです。

また、浄化槽が破損していることによって異臭がしたり、ハエや蚊が発生してしまったり、というような状態もこれに当てはまります。注意しておきましょう。

1-1-3.著しく景観を損なっていると判断された空き家

外壁や屋根などが傷つき、著しく景観を損なっているという場合、特定空き家として指定されてしまいます。見た状態で明らかに放置された空き家であることが分かる場合、という言葉に置き換えても良いでしょう。窓ガラスなどが割れたまま放置してある状態なども、これに含まれます。

1-1-4.生活環境を守るうえで不適切だと判断された空き家

これは、上記の件以外で生活環境を脅かす恐れのある場合、という解釈で構いません。例えば、敷地内の木が道路などにはみ出してしまい、通行の妨げになっている場合などが、これに当てはまります。

他にも、空き家を放置していることによって、そこにホームレスが住み着いてしまったり、暴走族のたまり場になってしまっていたり、というような場合も含まれます。そのような事態は所有者の責任ではないように思えるかもしれませんが、それを改善する義務は所有者にあると国が判断したのですから仕方ありません。注意しておきましょう。

1-2.空き家対策法が制定された理由

空き家を放置している人にとっては疎ましくて仕方のない空き家対策法ですが、そもそもなぜ制定されることになったのでしょうか。

それは空き家を放置していることによって、これまでいくつものトラブルがあったからなのです。そして、その過去の案件を踏まえ、近隣住民からも声が上がり、それを汲み取る形で空き家対策法は制定されました。ではここで、いくつか過去に起きた事案を紹介していきます。

1-2-1.近隣住民の安全確保のため

放置していた空き家が突然、崩壊したという例は全国で報告されています。特に東北や北海道においては、雪の重みで空き家が倒壊してしまったという例がいくつも報告されています。それによって死傷者が出たという報告はありませんが、そのような状態の空き家を放置していたら、いつか犠牲者が出てしまうことになるというのは、誰でも想像がつきます。このようなことから、近所に住む住民たちの安全を守るという意味で、空き家対策法は制定されたのです。

1-2-2.トラブルを回避するため

空き家が放置されていると、様々なトラブルが発生してしまいます。特に近所に住む住民は、ネズミの異常発生や異臭などのような間接的な被害を受けることが多く、それを改善しようと所有者に電話をかけたり、実際に家に訪ねたりするようになることが今までに何度もありました。

しかし今までは、そのような空き家を処分しなければならないというような法律は存在しなかったので、お互いに水掛け論をするばかりで、話し合いは平行線を保つばかりでした。そして、それがトラブルに発展してしまうということも多く、裁判になったケースも存在します。そのようなトラブルが多くなってしまったため、空き家に関する基準をしっかりと決めることが必要になり、国がついに重い腰をあげた結果、空き家対策法はできあがったのです。

1-2-3.建物の価値を守るため

実は、放置されていた空き家が近所にあると、近所の家の評価額が下がってしまいます。なぜなら、家を買う人からすれば、近くに空き家があればネズミの発生や異臭、様々なトラブルを思い描くので、その近くにある物件を避けようとします。売れない物件であれば当然、値段を下げるしか方法はないため、空き家周辺の物価価値は下がってしまうのです。

空き家を所有している本人はそれでも構わないかもしれませんが、近所の人間からしたら怒り心頭です。さらに、これは怪我や臭いというもの以外の目に見える実害です。実際の被害が出ている以上、国としても放置しておくわけにはいきません。そのため、新しい法律を定め、空き家に対して自治体などが処置をできる法律を制定したというわけです。

1-3.特定空き家に対する措置

市町村がその家を特定空き家だと指定した場合、様々な措置が取られることになります。では、もしも自分が持つ空き家が特定空き家に指定されてしまった場合、どのような措置を取られてしまうのでしょうか。

1-3-1.立ち入り調査

これは、その家が特定空き家と指定するべき空き家であるかどうかを確認するための立ち入り調査となります。近所の住人からの通報、明らかに見た目が特定空き家に該当するだろうという場合などに、市町村がその家を立ち入り調査することになります。

所有者には許可を取ることになっていますので、勝手に行われるということはないです。しかし、もしもそれを拒んでしまえば、20万円以下の過料が科せられてしまいますので、どちらにしても断ることはできないということになります。つまり、目をつけられたら逃げる術はないということです。

1-3-2.住宅用地特例から除外される

これは立ち入り調査によって、特定空き家だと指定された場合の話です。その場合、固定資産税の住宅用地特例が除外されることになり、今までの六倍の固定資産税を支払わなければならなくなります。

住宅用地特例とは、建物が建っていればその土地にかかる固定資産税が六分の一になるという法律です。つまり、空き家を持っている人は、ほとんどの人が固定資産税が六分の一に減額されているということになります。

しかし、特定空き家に指定されてしまうと、住宅用地特例から除外されることによって、建物が建っているにも関わらず、更地と同様の固定資産税を支払わなければならなくなってしまうのです。

そもそも、固定資産税を今までの六倍支払わなければならないからこそ、節税対策として空き家を放置しているという人が多く存在します。そのため、そのメリットをなくすことによって、空き家の解体を促そうというのが、住宅用地特例除外の目的なのです。

1-3-3.市町村からの命令

特定空き家と指定された場合、市町村から所有者に対して、空き家の撤去や適切な保全を命令されることになります。しかし市町村からの命令は、指導・勧告・命令というように、段階を踏まえて行われます。

もしも、これに違反し、いきなり市町村が撤去の命令をしてきた場合、その命令は無効となります。つまり、撤去を絶対にしなければならないところまで追い込まれるには、それなりの段階が踏まれるということです。

指導・勧告を受けても、一向に改善が見られない場合、市町村から命令が出ることになりますが、もしもこれにも従わなかった場合は、50万円以下の過料を科せられることになります。さらに、市町村が空き家を強制的に撤去できるという行政執行も行われることになり、その際の費用は所有者が支払うわなければならないという決まりになっています。

50万円以下のお金を支払い、強制撤去の費用を支払わなければならないのであれば、そのような処分が下される前に自分で撤去したほうが良いということになります。撤去費用は市町村が持ってくれると勘違いしている人も多いので、そうではないということをしっかりと覚えておきましょう。

2.空き家対策法の対策

空き家対策法によって、自分が持っている空き家が特定空き家に指定されてしまうと、どれだけ面倒なことになってしまうかは理解できたと思います。

そこでここでは、特定空き家に指定されないための対策を紹介していきたいと思います。今はまだ、特定空き家に指定されるほど劣化していない空き家を持っているという人も、いずれは決断しなければならないことですので、しっかりと学んでおきましょう。

2-1.賃貸物件として活用する

空き家は、しっかりと手入れがされていれば特定空き家に指定されることはありません。人が住んでいれば管理もしっかりされますし、そもそも空き家ではなくなります。そのため、賃貸物件として貸し出せば、特定空き家に指定されることは避けられるのです。

さらに、賃貸物件として貸し出せば特定空き家に指定されないどころか、家賃収入という副収入を得ることができます。つまりこれは、一石二鳥の方法なのです。しかし、どのような物件でも賃貸物件として貸し出せるわけではありません。そのためには、それなりにお金がかかってしまうのです。

2-1-1.リフォームをしなければ入居者が現れない

空き家を賃貸物件として貸し出すためには、リフォームをする必要があります。建物の劣化というものは意外と早いもので、数年放置しておいただけでも、外見上異変はなくても家の中はかなり荒れてしまうものです。

そのため、数年放置していた空き家を賃貸物件にする場合には、リフォームをする必要があります。荒れ果てた空き家など、どれだけ安かったとしても住んでくれる人はいませんので、仕方ありません。

また、安全性の面から見ても、放置しておいた空き家に、そのまま人を住ませるというのはやめておくべきです。万が一、事故が起きてしまったら取り返しがつきません。かなりの費用がかかってしまいますが、賃貸物件にするためには、それなりの先行投資が必要になってくるのは仕方の無いことです。

2-1-2.住居者募集にかかるお金

賃貸物件として貸し出す際には、不動産会社などにお願いして広告を載せてもらうことになります。しかし、それもタダで出せるというわけではなく、不動産の広告を出すためのお金が必要になってくるのです。

それほど高額というわけではありませんが、入居者が決まらなければ、その分長くそのお金を支払い続けなければならなくなるため、場合によっては、いつの間にか高額料金を支払っていた、ということにもなり兼ねないのです。賃貸物件として貸し出すと簡単に言っても、そのためにはかなりの費用がかかってしまうこともあるため、注意が必要です。

2-2.空き家を管理する

特定空き家に指定されないためには、建物が劣化していかないように、空き家のまま自分で管理していくという方法もあります。しかし、管理するといっても、どのように管理すれば良いかわからないものです。そこでここでは、空き家の管理の方法について紹介していきます。

2-2-1.個人で空き家を管理する

空き家を管理すると聞き、真っ先に思いつく方法は自分で管理をするという方法でしょう。空き家を管理する場合には、月二回ほどその空き家に行って、手入れを行えばキレイに保つことができます。

では、実際に空き家に行って何をすれば良いかというと、まずは空気の入れ替えです。全ての窓を開け放ち、最低でも一時間ほどはそのままの状態にしておきましょう。押入れや靴箱なども同様に開放して、空気を入れ替えるようにしてください。

空気の入れ替えを行いながら、掃除を行うということも大切です。意外とホコリや虫の死骸などがあったりするので、拭き掃除をしっかりと行うようにしましょう。

そして、掃除や空気の入れ替え以上に大切なのが確認作業です。家の中に雨漏りしている箇所はないか、外壁などに破損はないか、そして帰る際にはしっかりと戸締りの確認、これらを必ず行うようにしましょう。

2-2-2.業者に依頼する

空き家を個人で管理するとなると、月に二回も掃除などに時間を費やさなければならなくなるため、かなりの負担になってしまいます。近場にあれば大丈夫かもしれませんが、遠くにある場合には、その交通費だけでもかなりの痛手になってしまうでしょう。

そんな時に便利なのが、空き家管理業者です。不動産会社がサービスとしてやっている場合が多いのですが、お金を支払うことによって、空き家管理を代行してくれる業者が、世の中には多く存在するのです。

月の費用も一万円未満でやってくれる業者も多く存在します。交通費のほうが高くつくという場合には、業者にお願いしてしまったほうが安くつくということもあるのです。

さらに、月に一回だけお願いして、もう一回は自分で行うというように、自己管理と併用することもできます。これならばかなり負担を減らすことができますし、料金も安価で済むので、良い方法です。

まとめ

ご両親が亡くなり、売るに売れない状況という現状もあるかもしれません。しかし、今回述べたように、様々なリスクがあるということを認識しておきましょう。

この記事により、空き家対策特別措置法に関する正しい知識を身に着け、不要なリスクを排除できれば幸いです。

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